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過去を懐かしむ健人の目は、どこか遠くを見ている。
由宇は、ひどく不安になってきた。
(愛した人から、久しぶりの電話があるなんて)
瑞紀が、もう一度付き合いたい、などと言い出したらどうしよう。
いや、瑞紀とは限らない。
(健人さんが、瑞紀さんへの恋を再燃させたりしたら、どうしよう!)
少しの間、ぼんやりしていた自分に気付き、健人は我に返って由宇に視線を戻した。
元・恋人の話なんかして、またクッションで殴られるかと思ったが、彼は様子が変だ。
うつむき、瞼を伏せ、唇を薄く噛んでいる。
(これは、失敗しちゃったなぁ)
健人は、すぐに由宇の気持ちを察した。
以前、美咲と二人で食事をした時も、こんな表情を見せたのだ。
瑞紀との関係を、不安視しているに違いない。
「ごめんね、由宇くん。瑞紀くんとは、もうただの友達だよ」
「……本当ですか?」
「彼にも、新しい恋人がいるから心配しないで」
健人の言葉に、由宇は気づいた。
『彼にも、新しい恋人がいるから心配しないで』
「彼にも、って。『も』というのは……」
「もちろん、私にも今の恋人がいる、ってことさ。由宇くんは、最高のパートナーだよ」
「健人さん……!」
由宇は、すぐに健人の胸に飛び込んでいた。
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