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 オーダーした飲み物が運ばれ、ウエイターがその場を離れると、健人は瑞紀に問いかけた。 「どうしたの? 改まって、会って話がしたい、なんて」 「うん。実は僕、引退するんだ」 「えぇっ!?」  健人は驚き、由宇は目を円くした。 「6月のレース『スター優駿』を最後に、ね」  瑞紀が、競馬の騎手になったことは、健人から聞いている、由宇だ。  しかもそれが、二人が別れた原因となっている。  由宇もまた、瑞紀に問いかけずにはいられなかった。 「瑞紀さんは、健人さんと同じ大学に進めるくらいに、成績優秀だったと聞いています」  だが彼は進学を拒んで、ジョッキーへの道を選んだのだ。  女性だからというだけで、周囲に反対されて阻まれた、母の夢を引き継ぎたい、と。  進路は違うが交際は続けたい、と願う健人をも、振り切った。  騎手免許を取得するためには、競馬学校に入学しなくてはならない。  倍率が約10~20倍と、非常に難易度の高い狭き門だ。  合格するには、健人との恋を犠牲にするほどの覚悟が、瑞紀には必要だったのだ。

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