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「彼も、競馬の騎手だったんだ。やっぱり、鞭を入れることが苦手な人」
「瑞紀さんと同じで、優しい方なんですね」
由宇の合いの手に、瑞紀は照れたように微笑んだ。
「うん、とても優しい人だよ。正式に結婚しよう、って言ってくれたし」
その報告に、健人は、おめでとう、と言えた。
心から、彼を祝福することができた。
(由宇くんと出会わなかったら、きっとこうはいかなかっただろうな)
美咲に手ひどく振られた心の傷を抱えたまま、上辺だけの祝いの言葉を吐いていただろう。
「健人くんには、今まで支えてもらったから。ちゃんと会って伝えたかったんだ」
「ありがとう。忙しい時間を割いて、報告してくれて」
この後は、調教師や厩舎のスタッフとのミーティングがある、と瑞紀は席を立った。
それと同時に、由宇も立ち上がった。
「瑞紀さん。移動時間は、どれくらいかかりますか?」
「え? 電車で、20分くらい、かなぁ」
「僕も、同行していいですか?」
その20分の間に、もっと瑞紀と話しがしたい、と由宇は言うのだ。
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