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「じゃあ、私も由宇くんと一緒に……」
「健人さんは、先に帰ってください」
「えぇっ?」
二人だけで、話しがしたい。
そんな由宇の願いを、瑞紀は快諾した。
健人は、心配していたが。
「ごめんね、瑞紀くん。由宇くん、彼のモチベーションを下げないでよ?」
なにせ、2週間後には引退試合を控えている、瑞紀だ。
(由宇くんのことだから、大丈夫とは思うけど)
二人に駅まで付いて行き、電車を見送った。
一方、瑞紀はリラックスしていた。
(由宇くん、きっと元・恋人の僕が気になるんだろうな)
そして、健人くんの過去を知りたいに違いない。
そんな風に心構えができていたので、彼に笑顔を向けることができた。
「さて。由宇くんは、まず何が訊きたいのかな?」
「はい。瑞紀さんが、最後に騎乗する馬の名前です」
「……意外な質問」
「僕、瑞紀さんを応援したくなったんです」
由宇は、真剣なまなざしを瑞紀に向けていた。
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