125 / 256

4

「もしもし、美咲さんですか? こちらの推し馬が決まりました」 『由宇くん。じゃあ、教えてくれるかなぁ?』 「ハッピィサカモト、ヤワミシラタマ、ブルーフェニックス。この3頭です」 『マジ? ナンカイイーグル、推さないの? あの馬、速いそうだよぉ?』 「このラインナップで、勝負です。そちらと被っている馬は、いませんか?」 『こっちは、ナンカイイーグル、アイスワーラー、バビロンミナミ。大丈夫だよぉ』  後は少しだけ話をして、由宇は美咲との通話を終えた。 「吉井さんは、何て言ってた?」 「ずいぶん張り切った様子でしたよ」  絶対に勝っちゃうんだからぁ、と、由宇は美咲の口真似をして見せた。  健人は笑いながらも、首を縦に振った。 「彼女は高橋さんとの結婚も、かかってるからね」  高橋は、この競馬勝負で勝利し大金を手に入れれば、美咲にプロポーズする、と言ったのだ。  悪だくみはするし、ケンカもするが、お似合いの二人。  健人は、美咲と高橋には勝敗の関係なく、結ばれて幸せになって欲しかった。 「そういうところが、甘い。そして、チョロいと言われるんですよ。健人さん」 「耳が痛いよ、由宇くん」 「でも僕は、そんな健人さんが大好きです」  笑いながらも健人は、由宇にそっと身を寄せた。

ともだちにシェアしよう!