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「ねえ、由宇くん。結婚とか、考えたことある?」 「結婚とは、配偶者と呼ばれる人々の間の、文化的、もしくは法的に認められた繋がりです」 「いや、あの。そういう意味じゃなくって……」  ひとつ咳をし、健人は大切な言葉を口にした。 「私と、結婚してくれないかな」 「えっ?」 「君と、結婚したいんだ」 「待ってください、健人さん。自分が何を言ってるか、解ってますか?」  ヒトとアンドロイドが、結婚するだなんて!  ハイテクの塊である由宇が、意外にも古風なことを言ってきた。  しかし健人は、怯まなかった。 「確かに私は、君と違って無知で愚かなヒトの一個人に過ぎない。でも、愛しているんだ」 「僕と。アンドロイドと結婚なんかしたら、世間に奇異の目で見られますよ!」 「かもしれない。だけど、そんな目で見ない人を、僕はちゃんと知ってる」 「誰ですか?」 「羽田くん」 「あの、妙に明るい人ですか……」  社員旅行で、由宇は羽田に会っている。  お調子者で軽いノリの、健人の部下。  そして、すぐにアンドロイドである由宇を受け入れた男だ。 『良い、ッスね! 最近じゃ、アンドロイドと結婚する人もいるし!』  ためらいもせずに、健人にそう返したこともある。  しかし、今一つ由宇の表情は晴れなかった。  健人からのプロポーズを、素直に喜べないでいた。

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