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「ごめんね。泣かせるつもりじゃなかったんだ」  健人は由宇の頬を、温かな手のひらでふんわりと包んだ。 「勢いでプロポーズしちゃって、ごめん。もう少し、時と場所を選ぶべきだったね」 「健人さん……」 「でも、君を幸せにしたい。そして、二人で幸せになりたい、という気持ちは確かなんだ」  少し待っててね、と言い残し、健人は書斎へと入って行った。  そして再び由宇の前に現れた時には、手に空色の封筒を持っていた。 「これは、由宇くんに同封してあった手紙なんだ」 「僕が読んでも、いいんでしょうか」 「ぜひ、読んでもらいたい」  由宇は、便箋を受け取った。  開いてみると、そこには青いインクでしたためられた、肉筆の文字が並んでいた。 『この子を選んでくれて、ありがとう。  名前は、由宇(ゆう)といいます。  どうか、幸せにしてあげてください』  手紙を手にしたまま、由宇はゆっくりと瞼を閉じた。

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