128 / 256
2
「ごめんね。泣かせるつもりじゃなかったんだ」
健人は由宇の頬を、温かな手のひらでふんわりと包んだ。
「勢いでプロポーズしちゃって、ごめん。もう少し、時と場所を選ぶべきだったね」
「健人さん……」
「でも、君を幸せにしたい。そして、二人で幸せになりたい、という気持ちは確かなんだ」
少し待っててね、と言い残し、健人は書斎へと入って行った。
そして再び由宇の前に現れた時には、手に空色の封筒を持っていた。
「これは、由宇くんに同封してあった手紙なんだ」
「僕が読んでも、いいんでしょうか」
「ぜひ、読んでもらいたい」
由宇は、便箋を受け取った。
開いてみると、そこには青いインクでしたためられた、肉筆の文字が並んでいた。
『この子を選んでくれて、ありがとう。
名前は、由宇(ゆう)といいます。
どうか、幸せにしてあげてください』
手紙を手にしたまま、由宇はゆっくりと瞼を閉じた。
ともだちにシェアしよう!

