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 由宇が運んで来てくれた甘酒は、冷たくはなかった。  熱すぎず、かといってぬるくもない。  心地よい温かさに、整えられていた。 「寝る前の冷たいものは、体に悪いですから」 「ありがとう。その気配りが、なにより健康にいいよ」  二人で軽く甘酒の杯を合わせ、一口飲む。  心身に、潤いが染み込んでいく。  健人が瞼を閉じ、その味わいを噛みしめていると、ふいに由宇がつぶやいた。 「……乃亜さんには、両親がいないんです」 「えっ?」  思わず健人は、由宇の方に向き直ろうとしたが、それは彼に止められた。 「お願いです。そのままで、聞いてください」 「……解った」  健人は、甘酒を手にしたまま、再び瞼を軽く閉じた。  それを確認し、由宇は話し始めた。

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