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「生来の天才は、望んで授かることができません。また、その才覚を見出すまでには、時間がかかります」 「確かに、そうだ」 「ですから政府は秘密裏に、あるプロジェクトを実行しました。そして生まれたのが、乃亜さんです」 「ある、プロジェクト?」  そこで由宇は、ゆっくりと一口、甘酒を含んだ。  のどを潤し、小さく息を吐き、続けた。 「極秘で提供された、優秀なアルファの卵子と精子。政府機関はそれを受精させて、人為的に天才を創り出したのです」 「な……!?」 「乃亜さんは、そうした人造天才の一人。今は18歳に成長し、自分の研究チームをひとつ任されています」  今度は健人が、甘酒を一口飲んだ。  手の震えをそのままに、一瞬にして干上がった喉を、湿らせた。 「生まれてからこれまで、乃亜さんは実際に体験する、ということをほとんど知らずに育ちました」  表向きは、高い能力を持って生まれたギフテッドのための、特別な教育研究施設。  しかしその深部には、乃亜をはじめとする人造天才たちがいる。  いや、隠されている。  出生を明らかにできない彼らは、外の世界から隔離されて生きているのだ。

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