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「人工衛星に搭載してある、僕のメインブレインと、乃亜さんの持つ端末の一つが繋がっています」
由宇が見たり聞いたり、感じたりしたことを、乃亜は疑似体験しているのだ。
「え、待って。由宇くん、それって。ちょ、待っ……!」
「どうしたんですか?」
「わ、私とのエッチとか、も……? キャー!」
「あくまで疑似体験、ですよ。それに乃亜さんは、圭吾さんのことが好きなんです」
好きな人がいるのに、愛情表現の方法が全く解らない。
乃亜にはひたすら、実用的な学習だけが課せられ、情操教育はないがしろにされたからだ。
「何だか。いや、すごく可哀想な人だね……」
「そうなんです。僕は運よく、健人さんという素晴らしい人と出会えました」
だが乃亜は、それを指をくわえて眺めることしかできないのだ。
二人は、最後の甘酒を飲み干した。
由宇はうつむいてしまったが、健人は顔を上げて、彼の肩を力強く抱き寄せた。
「健人さん!?」
「私は、乃亜さんに会いたいな! 由宇くんとの結婚の、お許しをいただかなきゃ!」
「健人さん、ったら。まだ、そんなことを!」
「競馬勝負が終わったら、乃亜さんに会いに行く。いいね!」
由宇が何か言う前に、健人は彼の唇をふさいだ。
もちろん、自分の唇で。
由宇の腕も、健人の体にしっかりと回された。
このキスの熱量も、乃亜さんには届いているんだろうか。
それでも今は、由宇に口づけずにはいられない、健人だった。
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