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 美咲と話を終えた由宇は、健人の元へと戻り、彼のジャケットの裾を握りしめた。 「どうしたの、由宇くん」 「健人さん。僕は……自分が恥ずかしいです」  由宇は、美咲と交わした会話の内容を伝えた。  彼の心を震わせたのは、この一言だった。 『だってぇ。由宇くんとは、友達なんだもん。友達から、お金を巻き上げるような真似は、できないよぉ』  美咲の言葉には、健人も驚いた。 「吉井さんが、そんなことを?」 「はい。彼女は、アンドロイドである僕を、心から友達だと言ってくれました」  だのに、と由宇はうつむいた。 「僕は以前、高橋さんの周辺を探るために、彼女のスマホに不正アクセスを……」  友達のプライベートを、こっそり盗み見るような悪事を働きました。  そう、由宇は悔いていた。 「いいんだよ、由宇くん。これから正していけば、それでいいんだ」  優しく髪を撫でてくれる、健人だ。  されるままに、由宇は彼に頭を預けた。 (健人さんの傍にいれば、僕はどんどん良いことを学習できる)  そして、彼の隣に立つにふさわしい存在に、なるんだ。  由宇は、また一つスキルアップしていた。

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