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「健人さん。瑞紀さんは、優勝できますよね?」
「由宇くん。それは、神様しか判らないことだよ」
「僕は瑞紀さんに、ぜひ。いえ、絶対に1着を獲って欲しいんです」
「じゃあ、私と一緒にお祈りしよう。神様に」
AIは、神を信じるのだろうか。
健人は疑問を感じた。
データに基づいた数値で判断し、確率で決定する、スーパーコンピューター・由宇。
(世界には多くの宗教があるから、どの神様に祈りましょうか? なんて言うかな?)
そんな風に思ったが、由宇は素直に両手のひらを合わせて、目を閉じた。
「神様。どうか瑞紀さんを、1着にしてください」
「由宇くん、何の神様にお祈りしてるの?」
「馬の神様です」
「なるほど……」
二人は、そうやって祈っていたが、一方の大輝はソワソワと落ち着かなかった。
立ったり、座ったり。
座ったり、立ったり。
「もう! いいかげん、覚悟決めたらぁ?」
「いや、しかし」
「一番人気の、ナンカイイーグルに賭けてるんでしょぉ? 大丈夫だって!」
「う、うん……」
優秀な血統を持つ駿馬、ナンカイイーグル。
その騎手も、新進気鋭の若手ホープだ。
一般の競馬ファンも、多くが期待していた。
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