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第三十章 それぞれの思い

 ついに始まった、美咲・大輝ペアと由宇・健人ペアの競馬勝負。  美咲側の推し馬が一着に入れば、健人は大輝に1億支払うこととなる。  逆に由宇側が勝てば、美咲は今後一切、健人を誘惑しない。  今や友達同士になった、由宇と美咲で考えた取り決めだ。  圧倒的に美咲たちの利が大きいようだが、由宇にとっては健人の確保が最優先だった。 『健人さんは、甘くてお人好しでチョロいから。僕は心配なんです』  由宇は、冗談半分で美咲にそう言った。  しかし、半分冗談でも、残りの半分は本気なのだ。  ヒトの心は、簡単にうつろう。  美咲は確かに良い友人になったが、そして恋人の大輝がその隣にはいるが。 (それでも、彼女の気持ちが健人さんに傾く可能性は、残っているから)  なにせ、職場が同じなのだ。  優しい健人に、クラリとなびくことだって、充分にありうるのだ。  そんな思惑から、由宇は条件を提示した。  最初は。

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