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第三十一章 激闘の果てに
『仕掛ける、ブルーフェニックス! 前へ、前へ……ペースが上がります!』
『各馬、高速で4コーナーへなだれ込んでいく』
『さあ、どの馬が先頭で、直線に駆け上がってくるのか!?』
しっかりと手を握り合い、健人と由宇はコースを、馬を、瑞紀を見守っていた。
大輝は、ブルーフェニックスが追い上げるさまを見て、おろおろし始めた。
「だ、大丈夫だな? 残りの直線、ナンカイイーグルが逃げ切るよな?」
「しっかりしなさいよ、大輝。ここまで来たら、後は時の運でしょぉ?」
美咲が大輝を小突いたその時、スタンドの歓声が一段と大きくなった。
『どの馬が抜け出す? 先頭は? ……来たッ!』
『来た、来た、来たぁ! ブルーフェニックスだぁッ!』
『トップは、ブルーフェニックス。続いて、ナンカイイーグル。バビロンミナミと続きます』
しかし、健人と由宇は手放しでは喜べない。
大輝と美咲も、諦めてはいない。
各馬、ほとんど横一線で、差が無いのだ。
まだ、解らない。
まだ、解らない。
勝負は、これから。
正念場は、ここからなのだ。
今回のレースでは、ブルーフェニックスを始め、各馬3コーナーの入口から早めに脚を使っている。
この早い仕掛けで、果たして耐えられるのか。
最大の難関。
このコースの長い直線に、耐えられるのか。
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