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「行くよ、ブルーフェニックス。最後のスパートだ!」
馬上の瑞紀は、軽く鞭を当てた。
これは、ラストスパートの合図。
叩いて馬を追うわけでは、ないのだ。
ブルーフェニックスは、そんな瑞紀のサインをしっかり理解し、受け取っていた。
本番さながらの練習でも繰り返した、彼との意思疎通。
この馬は、気づいていた。
こいつは、今までの奴とは違う。
俺に痛みを与えて、無理やり走らせる奴らとは、違う。
一緒に走って、楽しい奴だ。
俺に初めて、走る面白さを伝えてくれた奴だ!
ぐん、とブルーフェニックスが伸びた。
彼の持つ末脚の切れは、瑞紀の予想をはるかに超えていた。
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