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第三十二章 二つの乾杯
「全て円く収まって、良かったですね」
「めでたし、めでたし!」
由宇と健人はニコニコ顔で、ヤマモモジュースのグラスを合わせた。
瑞紀の素晴らしいラストランに、乾杯だ。
風呂上がりの火照った体に、冷たいジュースが染みわたる。
本当は、ビールで祝杯を挙げたい、健人だ。
だが、アルコールは飲めないという由宇に、付き合った。
『お酒は、由宇くんの体に悪いのかい?』
『いいえ。ただ僕は、まだ20歳前ですから』
忘れてしまうことすらあるが、由宇はアンドロイドだ。
アルコールが、その組成に響くのかと思ったが、何のことはない。
彼は、この国の法律を守ると、言い張っているだけなのだ。
『いいんじゃない? 一口くらい』
『悪事はいけないと、僕は学びました』
こういういきさつを経て、ソフトドリンクで乾杯の運びとなったわけだ。
「甘酸っぱくて、とっても美味しいです!」
「由宇くん、一生懸命にヤマモモ摘みを、頑張ったからなぁ」
梅雨時でも、探せば楽しみはある。
健人と由宇は、ヤマモモの実をたくさん摘んで、ジュースやジャムを作っていた。
そのジュースで、まずは瑞紀のために乾杯をした。
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