158 / 256
2
一着騎手のヒーローインタビューで、瑞紀は清々しい表情を見せていた。
ようやく、最後の最後で手にした、優勝。
マイクを手にしたインタビュアーは、そんな瑞紀の引退をひどく惜しんだ。
『ブルーフェニックスとは、息がぴったりでした。名コンビ誕生と思うのですが?』
『ありがとうございます。でも、もう決めていましたから』
『フェニックスとなら、GⅠ勝利も狙えるのではないでしょうか?』
『僕の他に、素晴らしい騎手は大勢います。彼らに、夢を託したいと思います』
ただ、ブルーフェニックスは、鞭で追われるのが嫌いな馬だ。
彼に騎乗する人には、それだけは肝に銘じてもらいたい。
そう、しっかりと語った。
後ほど瑞紀は、健人に御礼とお別れの電話を寄こしてくれた。
そこでも彼は、ブルーフェニックスの今後を案じていた。
『一か月後に、彼の住む離島へ引っ越すよ』
『わりと、ゆっくりできるんだね。のんびり心身を癒すといいよ』
『ううん。その間に、ブルーフェニックスの引継ぎをするんだ』
『調教師さんや、騎手さんに?』
『そうなんだ。何か、頼られちゃって。僕も、馬が心配だし』
本来なら、一週間以内に引っ越すつもりだった、瑞紀だ。
だが彼は、ブルーフェニックスのために、今しばらく留まることにした。
責任感の強い、そして馬が大好きな瑞紀らしい、選択だった。
ともだちにシェアしよう!

