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「では、健人さん。もう一回、乾杯しましょう」
「よし! 今度は、吉井さんと高橋さんの前途を祝して!」
グラスで涼やかな音を鳴らして、由宇と健人は二度目の乾杯をした。
競馬勝負の決着がついた後、美咲と大輝は婚約したのだ。
『ちょっとぉ。大輝、いいかげん起きなさいよね』
『うぅ……ぐぅう……』
『負けても、1億消えるわけじゃないのよ? 私が長谷川さんに、ちょっかい出さないだけ』
『でも、俺は。この勝負に賭けてたんだ!』
勝てば健人から1億もらえるので、それを美咲との結婚資金に充てるつもりだった。
そう、大輝は床にしゃがみ込んだまま、告白した。
しかし、それは以前にも聞いた話だ。
彼の落ち込みの原因は、他にもあった。
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