167 / 256

第三十四章 突然のSOS

 すでに日は昇っているが、健人と由宇はまだベッドにいた。  肌触りの良い羽毛の薄掛けが、ひんやりと心地よい。 「健人さん、早く起きて朝食にしましょうよ」 「昨夜、ピロートークできなかったから……」 「だからって。もう、8時ですよ?」 「今日は日曜日で、出勤しなくてもいいから、さ」  のんびりと由宇に腕枕を与えながら、健人は天井を見上げて話し始めた。 「実は、会社を辞めようと思うんだ」 「えっ?」  大金を手にしても、これまで通りに働きたい、と健人は以前話していた。  仕事は忙しいが楽しく、やりがいを感じていたからだ。  それがまた、どうして気が変わったのか。  答えはすぐに、彼自身の口から聞くことができた。 「私は、まだ諦めていないよ。由宇くんとの結婚」 「健人さん!」  咎めようとする由宇の唇に、そっと人差し指を当て、健人は続けた。 「心配してくれて、ありがとう。でも私は、君がアンドロイドでも構わないんだ」  本当だよ、と由宇の唇に当てた指を、今度は可愛らしい鼻の先に移した。

ともだちにシェアしよう!