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「ど、どうしたの? 由宇くん!?」 「今、乃亜さんから、通知が届きました!」  こんなことは、初めてです。  由宇は声をひそめ、健人を見た。 「そうか。由宇くんと乃亜さんの端末は、繋がっているんだったね」 「でも。こんな風に、メッセージが送られて来たことは、一度もありません」  しかも、その内容がまた、問題だった。 「乃亜さんが、僕たちに助けを求めています!」 「どういうこと!?」 「はッ!」 「何、なに!?」 「……通信が、途絶えました」  とにかく健人は由宇を落ち着かせ、彼からメッセージを伝え聞いた。 『由宇、助けて欲しい。  このままでは、私は乃亜さまと引き裂かれてしまう。  君と長谷川さんのおかげで、私たちは愛し合うようになれた。  しかし、』 「しかし? しかし、の後は?」 「ここで、通信は途切れました。何らかの、妨害が入ったと思われます」  健人は唸り、考えた。 「これは乃亜さん本人ではなく、そのアシスタント・藤崎さんからのSOSだね」 「はい。乃亜さま、と呼んでいますから」 「前に由宇くんは、乃亜さんは藤崎さんが好きだ、って言ってたね」  彼に好意を抱いているのに、特殊な出生と生い立ちのために、愛情表現の方法が解らない。  乃亜は、それを知るためもあって、由宇を造った。  そして圭吾の手を借り、彼を密かに一般社会へ投じたのだ。  そんな二人が、助けを求めてきた。  健人と由宇に、緊張が走っていた。

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