171 / 256
5
「ど、どうしたの? 由宇くん!?」
「今、乃亜さんから、通知が届きました!」
こんなことは、初めてです。
由宇は声をひそめ、健人を見た。
「そうか。由宇くんと乃亜さんの端末は、繋がっているんだったね」
「でも。こんな風に、メッセージが送られて来たことは、一度もありません」
しかも、その内容がまた、問題だった。
「乃亜さんが、僕たちに助けを求めています!」
「どういうこと!?」
「はッ!」
「何、なに!?」
「……通信が、途絶えました」
とにかく健人は由宇を落ち着かせ、彼からメッセージを伝え聞いた。
『由宇、助けて欲しい。
このままでは、私は乃亜さまと引き裂かれてしまう。
君と長谷川さんのおかげで、私たちは愛し合うようになれた。
しかし、』
「しかし? しかし、の後は?」
「ここで、通信は途切れました。何らかの、妨害が入ったと思われます」
健人は唸り、考えた。
「これは乃亜さん本人ではなく、そのアシスタント・藤崎さんからのSOSだね」
「はい。乃亜さま、と呼んでいますから」
「前に由宇くんは、乃亜さんは藤崎さんが好きだ、って言ってたね」
彼に好意を抱いているのに、特殊な出生と生い立ちのために、愛情表現の方法が解らない。
乃亜は、それを知るためもあって、由宇を造った。
そして圭吾の手を借り、彼を密かに一般社会へ投じたのだ。
そんな二人が、助けを求めてきた。
健人と由宇に、緊張が走っていた。
ともだちにシェアしよう!

