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圭吾の腕の中で、乃亜は震えていた。
「僕、僕、どうしよう。圭吾さんは、他の誰かと結婚しちゃうの?」
「心配しないで、乃亜。健人さんと由宇くんに、助けてもらおう」
だから、由宇とリンクしている乃亜の端末で、彼らにメッセージを送っていた。
そう、圭吾は打ち明けた。
しかし、乃亜はまだ不安げだ。
「あの二人に頼って、大丈夫かなぁ。由宇はともかく、健人さんは普通のヒトだよ?」
「彼のひらめきや、思考力、判断力、行動力。どれも、尋常を越えているよ」
ギフテッドほどではないが、健人もアルファ男性だけあって、他者より優れた資質を持っているのだ。
圭吾は、そこに賭けていた。
(私と乃亜。二人だけでは手も足も出ないが、彼らが加わってくれれば、望みはある)
そして今一度、乃亜に向き合った。
「私のパートナーは、乃亜。君だけだよ」
「圭吾さん」
「だから、由宇への通信を続けよう。彼らに手伝ってもらって、馬鹿げた命令を破談にするんだ」
「解った!」
乃亜は圭吾の腕からするりと抜け出し、デスクに向かった。
すぐに端末を操作して、由宇へ送信を開始した。
圭吾も彼の傍に寄り添い、いろいろと知恵を出す。
檻の中で、たった二人の反乱が起きつつあった。
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