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「圭吾さんと女性との初顔合わせは、10日後に設定されています」 「あまり、時間が無いな」 「そして問題が無ければ、その日のうちに婚姻を交わし、同衾します」 「え!?」  ちょっと待ってよ、と健人は逆に、由宇へ問いかけた。 「そんな! いくらなんでも、早すぎないかな!?」  仕方が無いのです、と由宇は瞼を伏せた。 「あの研究施設では、それが当たり前なんです。優秀な子孫を残すためだけに、結婚するんですから」 「圭吾さんと乃亜さんとでは、ダメなのかい? 二人とも、優秀だよ?」  乃亜の第二性は、オメガだ。  男性だが、出産も可能なはずだ。 「乃亜さんは、ミュータントなんです」  優れたアルファの卵子と精子から、人為的に造られた天才たち。  その全員が、アルファとして形成されたが、ただ一人乃亜だけがオメガだった。  あり得ない、と科学者たちは驚いた。  どんなに細かくデータを見ても、乃亜は確実にアルファの特性を持つはずだ。  だのに、オメガとして生きている。  しかも、彼と同時期に生まれた、どのアルファたちより優秀なのだ。  常識では計り知れない、異端の子。  そんな乃亜は、子孫を残す対象から、外されていた。 「神様が、人間を試しているのかもしれないね」  健人は、思わずそう呟いていた。  生命を、自分らに都合のいいように、操作する。  そんな傲慢で身勝手な行いに、神が疑問を投げかけたのでは?  健人の言葉に、由宇も深くうなずいていた。

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