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「もう一度、言うよ。大丈夫だよ、由宇くん。きっと、巧くいくから」
「健人さん」
「だから、そんな悲しい顔しないで」
「……」
「まずは、施設の概要を知りたいな。見取り図とか、ある?」
「……」
「それから、脱出計画を実行する前に、会いたい。乃亜さんと圭吾さんに、ね」
何だか、目を輝かせて。
身を乗り出して語る健人を見るうちに、由宇もその気になってきた。
「本当に、巧くいくでしょうか?」
「巧くいくとも」
「乃亜さんと圭吾さんは、幸せになれるでしょうか?」
「なれるとも」
由宇は、乃亜が青いインクでしたためた手紙を、ふと思い出した。
『この子を選んでくれて、ありがとう。
名前は、由宇(ゆう)といいます。
どうか、幸せにしてあげてください』
僕は、幸せになれた。
健人さんが、幸せにしてくれた。
「だから……」
「ぅん?」
「だから、今度は……」
「由宇くん、どうしたの?」
「今度は僕が、乃亜さんを幸せにしてあげる番ですね!」
「そう、来なくっちゃ!」
由宇と健人は、しっかりと握手を交わした。
二人の瞳は、まっすぐに前を向いていた。
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