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第三十七章 圭吾の願い

 梅雨の、中休み。  そんな言葉がよく似合う、晴れて清々しい朝。  まもなく9時という時に、警備員たちは、中庭の向こうに二つの人影を見止めた。  背の低い方は、特別研究所の天才児だ。  もう一人、背の高い成人男性は、初めて見る顔。  ライトグリーンの作業着を身に着け、ツールボックスを持っている。  こちらへ向かってくる二人に、警備員は声を掛けた。 「おはようございます、乃亜さま。いつの間に、屋外へ出られたのですか?」 「やっぱり気が付かなかったんだね。14分26秒04前に、彼を迎えに中庭まで行ったよ」  まぁ、仕方が無いか、と乃亜は得意げに胸を張った。 「警備の隙をつく、新しいシステムの試験運用も兼ねてたから」 「わ、私たちを、被験者にしないでください……」 「君たちの職務怠慢じゃない、と上層部には報告しておくから安心して」  警備員たちは、ホッとした表情を見せた後、改めて厳しい顔をした。 「ところで、そちらの男性は?」 「彼は、エンジニア。うちの専属会社の技師だから、怪しくはないよ」 「IDカードを、拝見します」  一斉に視線を注がれたエンジニアは、首に下げたネックストラップを外した。  中には、IDカードが入っている。  警備員はそれを受け取り、スキャンした。  持ち主の氏名、所属企業、顔写真など、どこにも不審な点はない。 「失礼しました。どうぞ、お進みください」 「ありがとっ」  乃亜は軽く片手を上げ、エンジニアは会釈をして、セキュリティゲートを通った。

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