183 / 256
2
セキュリティゲートを後にし、研究所内へと進んだ乃亜は、いや、由宇はにっこり笑った。
「巧くいきました、健人さん」
「さすがは、由宇くん」
乃亜と瓜二つの由宇が彼になりすまし、見事に警備員たちを欺いたのだ。
一緒のエンジニアは、当然ながら健人だ。
乃亜と圭吾、由宇と健人の四人で話し合った結果、まずは会おうと意見が一致した。
そこで、二人が特別研究所へと侵入する運びとなった、というわけだ。
「僕、少しドキドキしました」
「乃亜さんは、由宇くんとは性格が違うようだね」
「はい。どちらかというと、ヤンチャです」
「なるほど、ね」
健人は、ぐるりと研究所内を見渡した。
温度湿度が、完璧に管理されている空気は、かすかに消毒液の香りがする。
白い壁には絵など無く、もちろんグリーンも飾られてはいない。
磨き上げられたフロアは、ただそこに立つものを映すのみ。
まさに殺風景で無機質な、監獄のような場所だった。
ともだちにシェアしよう!

