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第三十八章 希望をもたらす明るい光

「俺は、乃亜と一緒に外の世界へ出たい」  振り絞るような圭吾の声は、小さくかすれていた。  だがしかし。 「どんな手を使っても、だよ!」  愛らしい、鈴を振るような声が、細い声に被さった。  由宇と同じ声を持つ乃亜が、この場に現れたのだ。  手には、紅茶の入ったティーポット。  人数分のティーカップに、明るいオレンジ色の紅茶を注ぐ、乃亜。  その姿を見ながら、健人は心の中で、起動したばかりの頃の由宇を思い出していた。  あの時彼は、こう言ったのだ。 『健人さんの想いを踏みにじった相手は、許せません。その人に、報復してやりましょう!』  乃亜の言葉に、健人は納得した。 (さすがは、由宇くんの素体。過激な所は、同じだ) 「健人さん。何、ニヤけてるんですか?」  今は、それどころじゃないでしょう、と彼をたしなめる由宇に、健人はうなずいた。 「では、お茶も入ったことだし。お二人の脱出作戦会議、といきますか!」 「そうそう! どんどん行こうよ!」  威勢がいいのは健人と乃亜で、後の二人は慎重な表情だ。 「綿密な計画を練らないといけません」  声を潜める、由宇。 「外に出た後のことも考えないと」  先を見過ぎる、圭吾。  四人の胸中はそれぞれだが、思う願いは一つだった。  みんなで。  全員で、幸せになる。  そして、いよいよ脱出計画を話し合い始めた。

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