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「現在この国では、衛星画像の解析・通信傍受・世界各国での工作活動などを行っている」 「どれも今のところ巧くいってるけど、工作活動のレベルが低いんだよね」  圭吾や乃亜の言葉に、由宇はうなずいた。 「だから、僕の出番、というわけですね」 「冗談じゃないよ、由宇くん! 私は絶対に、君にハニトラなんかさせないから!」  健人の剣幕に、由宇は嬉しくなったし、圭吾や乃亜は笑顔になった。  彼が、心から。  真剣に、由宇を大切に思い、愛していると知ったからだ。  特に乃亜は、胸を熱くした。 (健人さんは、僕の願いをかなえてくれたんだ)  由宇を外の世界へ送り出すときに書いた、あの手紙。 『この子を選んでくれて、ありがとう。  名前は、由宇(ゆう)といいます。  どうか、幸せにしてあげてください』 「良かった。由宇は、幸せになれたんだね」  乃亜は、思わず心の声を口に出していた。  不安を抱えながら開発し、心配しながら施設の外へ出した由宇が、ちゃんと幸せになれた。  それは、自分のことのように嬉しかった。  そして、乃亜自身にも希望をもたらす、明るい光だった。

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