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「人質が、狭い範囲に限られるからマズいんだよ。もっと、広範囲で多くの人質を取るんだ」
「何か、嫌な予感が……」
そっと呟く健人の悪い予感は、的中した。
「世界中の人間を、人質にする。例えば、ヒトのDNAを書き換えてしまうウイルスをばら撒くぞ、とか!」
「最凶に過激だよ!」
「ダメかな? 本気でばら撒くわけじゃないよ?」
「倫理的に、いけません!」
乃亜と健人の二人が、たちの悪い漫才を繰り広げる様子を、圭吾はすまなさそうに見ている。
「すまない。乃亜は、まだまだ情緒が整っていなくて」
「僕は圭吾さんのおかげで、ずいぶん人間らしくなったと思うけど?」
唇を尖らせた乃亜が、彼を攻撃する前に、健人は急いで提案した。
「みんなの意見をまとめて考えた、私の作戦を聞いてくれるかな!?」
由宇、乃亜、圭吾の視線が、全て健人に注がれた。
(よく考えると、天才の中に凡才が一人だけ混ざってるんだ。大丈夫かな)
健人は、少し不安になってきた。
第二性がアルファなので、比較的優秀な素地を持って生まれた、健人だ。
さらにユニークな発想を持つ両親の元、深い愛情を注がれ育った。
(だからきっと、私の平凡な考えでも、誰かのアイデアのヒントくらいにはなるだろう)
父や母への思いを胸に、健人は自分の考えを話し始めた。
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