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第四十章 目覚めた兄弟たち
健人に、由宇。
そして、乃亜と圭吾。
四人の気持ちが、一方向へと定まった。
脱出計画を、実行に移す時が来たのだ。
「まずは、乃亜さん。由宇くんに、新しいプログラムのインストールを願います」
「任せといて。ジェネラル・由宇の誕生だよ!」
由宇は、この追加プログラムで、施設内に眠る軍用アンドロイドの司令塔になる。
起動した彼らの助けを得て、四人は特別研修所から、おさらばするのだ。
「ただ一つ、お願いがあります」
「何かな、言ってみて」
由宇に自分のコンピューターをリンクさせ、作業をしていた乃亜は、手を止めて彼を見た。
「ここを脱出した後、僕の兄弟たちが無事でいられるように、計らってください」
「あっ、そうか」
由宇の言葉に、乃亜だけでなく健人も圭吾もハッとした。
確かに、一度そむいたアンドロイドたちは、施設に残っても警戒されるだろう。
乃亜がまた、とんでもないプログラミングを残していったのでは、と疑われるだろう。
「最悪、廃棄処分になる恐れがある」
圭吾の口調には、少し焦りの色が見えた。
彼の心も、由宇たち人工生命に、寄り添い始めているのだ。
ただの便利な機械、ではなく、ちゃんとハートを持った、命。
体は機械かもしれないが、喜怒哀楽を持つ、この星に生まれた新種の生き物なのだ。
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