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第四十一章 大脱走マーチ!
突然の爆発音に、特別研究所の警備司令部は、たちまち大騒ぎとなった。
「一体、何事だ!? 場所は!?」
「軍用アンドロイド保管室です!」
「テロリストか!?」
「監視カメラの映像を、早く!」
モニターに頭を寄せ合った警備員たちは、信じられない光景を見た。
保管室は、内側から破壊されたのだ。
そして、そこからアンドロイドたちが、駆け出してくる。
「何が、どうなっているんだ!」
「暴走か?」
「AIが、ハッキングされたのか!?」
とにかく、一大事だ。
警備員の中でも、特別な訓練を受けた精鋭たちが、手早く武装した。
なにせ、相手は軍用アンドロイドなのだ。
軽装では、とても太刀打ちできない。
「彼らの行き先は?」
「待て……。奴ら、乃亜の私室に集合したぞ」
乃亜の名を聞いて、警備司令部の張り詰めた空気は、やや緩んだ。
「あのガキが、また何か悪さを仕出かしたな?」
「しばらく、様子を見ますか?」
所内の人間は、彼を『乃亜さま』と呼び、ご機嫌を取っている。
優秀過ぎる頭脳を敵に回すと、恐ろしい報復が待っているからだ。
しかし陰では、ガキ、化け物、など好き放題に、悪いニックネームで呼んでいた。
乃亜自身、研究所での自分の評価を知っている。
表向きはペコペコしておきながら、裏では陰口を叩く。
乃亜は、そんな大人たちが大嫌いだった。
心から、軽蔑していた。
そのうっぷんを晴らすように、彼は時々施設内で悪戯をやらかしていた。
司令部は、今回もまた、そんな乃亜の悪ふざけかと考えたのだ。
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