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「美咲さんと高橋さんが、僕たちを守ってくれているんですね」
「そうだよ。感謝しなきゃ」
「このことは、お二人も承知なんですか?」
「ああ。快く引き受けてくれたんだ。危険かもしれないのに、ね」
「美咲さん……」
由宇は、運転席の方へ目を向けた。
二人の会話を聞いていた美咲は、前を向いて運転しながら、片手でピースサインを作って見せている。
「由宇くん、気にしないでぇ。私たちぃ、友達じゃん!」
「ありがとう、美咲さん。ホントに……ありがとう……美咲さん」
「いいってことよ! それにぃ、長谷川さんから、お礼に新作のバッグ買ってもらえるしぃ」
「さすがです、美咲さん!」
「吉井さん、まだ高橋さんに買ってもらってなかったの?」
「だってぇ。大輝、ケチだし!」
車内は笑いに包まれたが、もう一台の運転手・大輝は大きなくしゃみをしていた。
「高橋さん、風邪ですか?」
「いや。きっと美咲が、俺の悪口を言ってるんですよ」
「美咲さんは、あなたの婚約者、でしたね」
「ええ。藤崎さんと乃亜さんも、いずれは結婚するんでしょう?」
おめでとう、と先に言っておきますよ。
そんな大輝の自然な笑顔に、温かな言葉に、圭吾は胸が熱くなった。
そして乃亜は、二人の会話を噛みしめていた。
(これが、普通の。外の世界で何気なく交わされる、生きた言葉なんだ……!)
なぜか一粒、涙がこぼれた。
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