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さすがにライフラインは見逃すつもりの健人だったが、他にも危うい点はある、との大輝の指摘だ。
「システム障害で不利益をこうむるのは、オンラインバンクや無線通信サービスだけじゃない」
「えっ?」
「俺たちの生活を支える、第一次産業。つまり、農業や林業、漁業だよ」
例えば、ヒトが生きていく上で必要不可欠な、食物を育てる農業。
そんな大事な業界だが、少子高齢化により、人手不足が続いている。
それをカバーするため、ICTやロボット、AIなどを活用し始めた。
「作業の自動化や、無人で走行するロボット農業用マシン。スマートフォンで操作する、水田の水管理を自動制御するシステムなどだ」
「そうでした……。私はまた、大切なことを見落としていた」
健人は、再び愕然とした。
第一次産業の機械化は、今に始まったことではないが、目覚ましい進歩を遂げている。
ドローンが空中から撮影した画像を分析し、害虫被害がある位置にピンポイントで農薬を散布する。
家畜にIoTセンサーを装着し、遠隔でその体調を見守ったりもしている。
「それらのシステムまで乗っ取り、攪乱してしまったら。それはもう、甚大な被害が広範囲に及ぶだろう」
「農業を営む皆さんに、ご迷惑はかけられないな……」
健人は、考え込んでしまった。
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