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 このままでは、計画がどんどん遅れてしまう。  時間が経てば経つほど、由宇たちに身の危険が迫るのだ。  だが、何も知らずに頑張って生きている人々に、迷惑はかけたくない。 (どうすれば、いいんだ!?)  低く唸る健人に、大輝が声を掛けてきた。 「長谷川さん。実は俺に、心当たりがあるんだ」 「心当たり? 何の、ですか?」 「どんどん迷惑をかけて欲しい種類の人間たち、だよ」 「そんな人が、いますかね?」  この社会に生きている以上、ヒトは何らかの形で役に立っている。  自覚が無くても、誰かの助けになっているものだ。  それすら否定するような大輝の発言に、健人は困惑した。 「社会に背いて悪事を働き、のうのうと暮らしている輩が、いるんだよ」  大輝の発言は、次第に熱を帯びてきた。 「奴らは権力にしがみつき、私腹を肥やし。未来に負債しか残さない、迷惑な人間だ」 「高橋さん。それって、まさか」 「そう、悪徳政治家だ。まだ下っ端の私でも、たくさんのスキャンダルを耳にしている」  代々政治に携わってきた高橋家の人間らしい、清廉な考えを、大輝は持っていたのだ。

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