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 企業からの闇献金受け取りや、脱税。  公費を使って、視察という名の海外旅行。  裏金のプールに、議席獲得のための賄賂。 「そして、それらを内部告発しようとしていた俺の友人は、陰で脅迫されて秘書を辞めた」 「何てことを……。その人は、無事なんですか?」 「一応は、ね。でも、もう政界には戻れない。志半ばで、悔しい思いをしてるんだ」 「よし! やりましょう!」  健人は、ターゲットを特別研究所と、汚職議員たちに絞った。 「まず手始めに、地方議員から悪事を暴こう」  地方の政治家たちが晒されれば、中央はきっと慌てる。  自分たちも、攻撃されるのではないか、と。 「そう恐怖感を覚えれば、特別研究所が助けを求めて来ても、簡単には動けないはずだ」 「僕たちを逮捕したら、秘密をバラされるかも、と思わせるんですね」 「さすが、由宇くん。その通りだよ」  では、と乃亜の方を見ると、彼はすでにニヤニヤしている。 「健人さんたちの話を聞きながら、政治家たちのコンピューターに侵入しといたよ」 「さすが、乃亜さん。仕事が早い」 「で、どうするの? 『電次元からの警告』って声明するの?」 「さすがにそれはマズいから、奇をてらわずに『匿名』とでもしておこう」 「OK。じゃあ、始めるよ。由宇、準備は良い?」 「はい。では、シークレット・レジャーにアクセスします」  由宇はわずかに首を上げ、軽く目を閉じた。  風も無いのに、彼の髪がふわりと泳ぐ。  健人は、起動したばかりの頃の由宇を思い出していた。 「あのときは、帯電してるんじゃないか、って心配したなぁ」  今では安心して、いや、信頼を寄せて見ることができる。  それだけ、健人は由宇について理解を深めていた。

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