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「あ、来たぁ! 見てみて! すっごい勢いで、拡散してる!」
スマホをいじっていた美咲が、歓声を上げた。
彼女が大輝に示した画面には、特別研究所の極秘事項が全て、しかも誰もが閲覧できるようになっていた。
人為的に作られた、天才たち。
彼らの、閉鎖された不自由な境遇。
そして、秘密裏に研究開発されている、軍用アンドロイド。
さらには、それらに投じられる莫大な予算の出どころまでもが、明らかになっていた。
国家からの予算だけでなく、表沙汰にできないレベルの、企業や団体からの献金や寄付が流れ込んでいる。
情報はSNSや、表向きはクリーンな公式ホームページに掲載され、たちまち大炎上した。
「ヤバいよね、これぇ。あ、大輝。悪代官たちも、晒されてるよ!」
「ホントだ! もう二度と、悪事は働けなくしてやる!」
汚職政治家たちの裏帳簿も白日の下に晒され、彼らの支持者からも苦情や問い合わせが殺到しているようだった。
「さて。そろそろ、いいかな」
圭吾は携帯を操作し、電話を掛けた。
相手は、特別研究所の上層部だ。
もちろん、こちらの現在地は特定できないよう、乃亜が少々いじっている。
「もしもし、藤崎です」
通話が繋がった途端に、電話口から怒鳴り声が響いてきた。
2mほど離れた健人の耳にまで届く、勢いだ。
圭吾は何も話さず、ただ向こうに喚かせていたが、やがて手にしたスマホを健人に渡した。
「駆け引きは、俺より健人さんの方が上手だろうから。後は、よろしく」
「どんな様子?」
「何か、怒ってるよ。愚かだね」
健人も苦笑いしながら、携帯を受け取った。
周囲の目は、全て彼に注がれている。
期待と、不安に満ちたまなざし。
未来は、健人に託されたのだ。
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