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第四十七章 未来は僕らの手の中

 圭吾から、携帯電話を受け取った、健人。  それは、特別研究所の上層部と繋がっている。 (さあ、正念場だ)  平気だと思っていたが、少し震えがきた。  ここで失敗すれば、由宇やその兄弟たち、そして乃亜と圭吾の未来が閉ざされる。  あまりにも重い責任を負い、健人は瞼を伏せた。  大きく息を吸って吐き、由宇に小さな声で訴えた。 「由宇くん。私の手を、握っててくれないかな」 「えっ」 「私に、勇気を与えて欲しいんだ」  由宇は無言でうなずき、健人の左手をしっかりと握った。 「ありがとう」  いい感じに肩の力を抜き、健人は話し始めた。 「お電話、代わりました」 『誰だ、お前は。藤崎は、どうした!?』 「私は『匿名』です。藤崎さんに代わり、要求します」 『要求、だと? 唐突に、何を言うか!』 「急ぎますので、手短に。あなた方には、二つの条件を飲んでいただきます」  健人が必要以上に会話を伸ばさない理由は、ちゃんとあった。  長引けば長引くほど、こちらの位置情報を特定される危険があるからだ。  いくら乃亜が細工をしているとはいえ、あちらも有能な人間やAIを備えている。  100%安全と、気を緩めるわけにはいかなかった。

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