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第四十八章 新しい家族

 全員で知恵を、力を、そして勇気を合わせて勝ち取った、自由。  皆が歓喜の声を上げる中、大輝だけは複雑な表情を見せていた。  気付いたのは、彼の婚約者・美咲と、健人だった。 「大輝、ハッピーじゃないの? ノリが悪ぅい」 「高橋さん、何か問題が?」  二人に声を掛けられ、大輝は我に返って愛想笑いを向けた。 「いや、失礼。嬉しくないわけじゃないよ。本当に、良かった!」 「しかし、浮かない顔をしてらっしゃる」  そこで大輝は再び表情を硬くし、悔し気な声を振り絞った。 「研究所のトップや地方議員は、相応の制裁を受けるだろう。でも、トカゲが尻尾を切って逃げたみたいに、巨悪の本体はそのままだ」  自分の無力さが情けない、と大輝はこぶしを震わせた。  自身が政治に関わる人間だからこそ、悔しさが大きいのだな、と健人は考えた。 「そうでもない、と私は思いますよ」 「えっ」 「高橋さんの、政治に対する澄んだ考えがあってこそ、今回の成功がつかめたんです」 「そう……かな?」 「そうですよ。むやみやたらにシステム障害を起こそうとしていた私を、止めてくれましたし」  それに、と健人はニヤリと笑った。 「この騒ぎ、これで収束するとは思えないんです」  健人の笑いに併せるように、美咲が大輝に寄り添ってきた。

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