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大輝に身を寄せた美咲は、健人と同じく悪い笑いを浮かべている。
そして、スマホの画面を彼に示した。
「ほらぁ。『匿名』2号、3号さんたちが、続々と生まれてるよぉ」
「これは……!」
『匿名』に続けと、内部告発や情報誌によるスクープが、次から次へとリークされているのだ。
それらは地方議員だけでなく、中央政府の汚職をも暴く内容だった。
「高橋さんの蒔いた種は、ちゃんと芽吹き、育っているんですよ」
「大輝、カッコいい! 超・エモい! 私、惚れなおしちゃったぁ」
「よ、よせよ。恥ずかしいから!」
結局はじゃれ合う二人を微笑ましく眺めていた健人は、いきなり服の裾を由宇に引っ張られた。
「健人さん! 皆が、早くご馳走食べよう、って!」
「そうだ、そうだ。私も、お腹がすいちゃったよ」
しかし、これだけの人数で、一度に食事を摂れるスペースが、健人宅には無い。
浮き浮きとはしゃぐアンドロイドたちだが、乃亜が健人に提案した。
「今すぐに、というのは無理だから、明日改めてレストランにでも行こうよ」
「いや、しかし」
「あの子たちなら、食事無しでも3年間は稼働できるから」
「3年!?」
「それに、たとえ砂漠の砂でも、吸収してエネルギーに変換できるし」
「砂漠の砂!?」
脱出に、あれだけ貢献してくれた彼らだ。
食事抜きやら、砂や石を食べさせるやら、そんなことなどできやしない。
健人は、思わず叫んでいた。
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