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「美味しかったですね、お寿司」 「皆と一緒に食べたから、美味しさが倍増だよ」  健人と由宇は、ダブルの部屋で髪を乾かしながら語り合っていた。  寿司店でお祝いの食事をとった後、一同はホテルへ移動したのだ。  乃亜と圭吾、美咲と大輝も、やはりダブルルーム。  由宇の兄弟たちも、それぞれでシングルやツイン、トリプルやクアッドなど、好きなタイプの部屋へと分かれた。  シャワーを浴びて髪を乾かし、健人は広いベッドに腰掛けると、大きく腕を広げて見せた。 「由宇くん! 久しぶりにエッチできるね!」 「もう。健人さんったら、解りやすいですね!」  それでも由宇は拒むことなく、素直にその腕の中へと納まった。  二人で唇を重ね、ゆっくりたっぷり、キスを味わう。  しかし、健人はキスの途中で唇を離し、由宇の顔を覗き込んだ。 「今も、乃亜さんは由宇くんを通して、情報を得てるの?」 「いいえ、すでにオフラインです。乃亜さんが、解除してくれました」  僕という一つの人格を、認めてくれたんです。  その言葉に、健人は安心した。 「そうか。乃亜さんも、今は外の世界で自由の身だからね」 「はい。これからは、自分自身の五感で、実体験していくんだそうです」  由宇はもう、乃亜の端末ではないのだ。  うん、と小さな声で返事をし、健人はうなずいた。  はずみで彼の額が、由宇の額と合わさった。 「おでこでキス、ですか?」 「そう。おでこでキス、だよ」  温かな想いが、胸いっぱいに広がる。  そして改めてキスをした後、二人は熱い時間へと飛び込んでいった。

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