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『私を、アンドロイドである由宇くんに、限りなく近づける。できますか?』  健人の出した結論だ。  その常軌を逸した考えに、乃亜は驚いた。 「人間を辞める、ってこと? いいの? それで、後悔しないの!?」  由宇は、止めようと縋った。 「健人さん! 果てしない時間を、生き続けることになるんですよ!?」  AIである由宇は耐えられるが、ヒトの心を持つ健人に、それが果たして可能か。  体は機械化しても、精神が耐えられないのではないか、と由宇は強く案じた。 「もちろん、私も全く不安を感じないわけじゃないよ。だけど、良い実験になるんじゃないかな?」 「実験、って! 僕だって、実験なら何でもかんでも好きなわけじゃない!」  乃亜は、声を張った。 「失敗するかも、だよ? それに、成功しても、そんな長い時を、どうやって埋めていくのさ!?」 「万が一、失敗しても悔いはない。それに、成功したら、由宇くんとやりたいことがあるんだ」  そこで、健人は由宇の手を取り、上を仰いだ。  素敵なフレンチレストランの高い天井には、美しい天球図が描いてある。 「あそこに行って、活躍したいな。もちろん、素晴らしい兄弟たちとも一緒に」 「……宇宙、ですか?」 「うん。過酷な環境に耐えられ、永遠に近い寿命を持つ。そんな私たちに、ぴったりの計画だと思わないか?」 「健人さん。健人さん……健人さん!」 「泣かないで……って、泣かせてるのは、いつも私か」  嬉し涙を流す、由宇。  それを優しくなだめる、健人。  彼らの姿に、乃亜と圭吾は顔を見合わせ、うなずいた。

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