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第五十一章 輝く二つ星

「じゃあ、また連絡するよ。皆、元気でね」  そうモニターに語り掛けた後、乃亜はマグカップを傾け、のんびりと待った。  火星と地球間での通信には、タイムラグが生じる。  数分後、ようやく火星基地からの賑やかな動画が届いた。 『乃亜さんも、元気でね!』 『僕、銀寿司の握りが食べたい!』 『早く、物質転位装置を完成させてよ!』 『ワープ航法も!』 『ステーキ、ステーキぃ!』 『お前たち、少し落ち着けよ』 『私は、温泉に入りたいですね』  由宇の兄弟たちは、相変わらずの様子だ。  思わず笑う乃亜だったが、この声は、すぐにあちらへは届かない。  彼らの後に、由宇が映った。 『火星基地は、順調に建設中です。進捗状況を更新して、地球へ転送しますね』  由宇もまた、変わらない。  乃亜が、自分自身を素体に造った、18歳の姿のままだ。  あれから、もう10年近く経った。  あの頃の圭吾と、同じくらいの年齢になった、乃亜。  そして圭吾も、彼と一緒に年を重ねた。  髪に白いものが目立つようになってきた圭吾が、乃亜の隣で微笑んでいる。 (これもまた、幸せの一つ、だよね)  がむしゃらに研究開発をしてきた乃亜だったが、今はそんな風に考えるようになっていた。

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