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「美咲さんは『梨をたくさん送るから食べてね』だって!」 「ありがたいなぁ。瑞紀さんは、何て?」 「こちらも、ありがたいよ。『お二人の家が、完成しました』って!」 「それは良いな。では、移住の支度を始めようか」  18歳まで、特別研究所で純粋培養されていた乃亜は、外の世界ではやはり体調を崩しがちだった。  そこで健人は、離島で在来馬の保護に努める瑞紀を、彼に紹介したのだ。 『自然豊かな島は、空気も水も食べ物も新鮮だ。乃亜さんには、もってこいだと思うんだけど』 『でも、宇宙開発をする健人さんや由宇をサポートする人間がいなきゃ、困るでしょ』 『旧・特別研究所には、有能な人材が大勢残ってるだろう? 今の仕事は彼らに引き継いで、乃亜さんたちはアドバイザーとして動いたらどうかな』  この健人の引き合わせに、乃亜と圭吾は乗ることにした。  彼が紹介する人間なら、間違いはない。  そう思えるだけの信頼を、健人は彼らに深く確かに刻んでいた。 「ね、圭吾さん。僕、馬にニンジンやってみたいな! 乗馬とか、できるかな!?」 「二人で一緒にやろう」 「馬糞も、落ちてるかな!?」 「どうだろう……」  青年になっても変わらない、乃亜の純粋さと愛らしさ。 (そして、ちょっと変な所も変わらないな)  圭吾は愛しいパートナーを、そっと背後から抱きしめた。

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