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健人と由宇は、乃亜への通信を終えた後、火星基地内に造ったラウンジでくつろいでいた。
「そろそろ皆で、長期休暇とろうか?」
「乃亜さんの開発したプラズマロケットのおかげで、二週間もあれば地球へ帰れますからね」
「お寿司食べて~、ステーキ食べて~」
「温泉に~、浸かりましょ~」
ふふふ、と二人で顔を見合わせて笑った。
ソファの手元にあるパネルを操作すると、大きな特殊硬化ガラスのブラインドが上がり、火星の景色が一望できる。
それは一面、荒涼とした赤い砂漠。
だが由宇は、軽くうなずき笑顔を見せた。
「砂嵐の期間が、予想より短かったですね」
「うん。おかげで、ほら。地球が見えるぞ」
日没が近い火星の夕空に、宵の明星のような星が輝いている。
あれが、地球。
健人と由宇の、故郷だ。
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