255 / 256

4

 健人と由宇は、乃亜への通信を終えた後、火星基地内に造ったラウンジでくつろいでいた。 「そろそろ皆で、長期休暇とろうか?」 「乃亜さんの開発したプラズマロケットのおかげで、二週間もあれば地球へ帰れますからね」 「お寿司食べて~、ステーキ食べて~」 「温泉に~、浸かりましょ~」  ふふふ、と二人で顔を見合わせて笑った。  ソファの手元にあるパネルを操作すると、大きな特殊硬化ガラスのブラインドが上がり、火星の景色が一望できる。  それは一面、荒涼とした赤い砂漠。  だが由宇は、軽くうなずき笑顔を見せた。 「砂嵐の期間が、予想より短かったですね」 「うん。おかげで、ほら。地球が見えるぞ」  日没が近い火星の夕空に、宵の明星のような星が輝いている。  あれが、地球。  健人と由宇の、故郷だ。

ともだちにシェアしよう!