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触れ合うほうがずっと熱い
「こたつが欲しい」
「駄目だ」
夕飯を食べていた時に、宇都峰 がふと思いついたかのように呟いた。俺がそれをすぐさま却下すると、少し驚いたような表情を浮かべて眉尻を下げる。
ここは宇都峰の家だ。本来なら口出しをする権利はない。だが、今や俺が管理していると言っても過言じゃないはずだ。勝手に始めたことではあるのは理解しているし、がちがちに管理をしようという気は今もこれからも一切ない。
しかし、コイツにこたつを与えてはいけないなんてことはバカでも分かる。
「えっ、そんなに駄目か……?」
「お前どうせそこで寝るだろうが」
「い、いや……そんなこと」
「絶対にある」
自分でも完全には否定できないのだろう。だんだんと声が小さくなっていき、視線をうろうろとさまよわせている。それでもどうしてもこたつを諦めきれないのか、宇都峰は尚も食い下がった。
「う……でも、」
「でも? よくもまァ、んなことが言えるな」
「!」
「連絡がつかねえと思って来てみりゃ床にぶっ倒れてたお前を見つけた俺の前で」
「それは本当にごめん」
俺が宇都峰の家へ通うようになって少し経った頃、一度だけ連絡がつかなくなった時があった。前日に疲れて帰ってきたコイツと顔を合わせて、翌日久しぶりに休みだと喜んでいた姿を見ていたから余計に不安を覚えたのは決して忘れないだろう。蓋を開けてみればベッドにたどり着く前に寝落ちしただけだったのだが。
呼吸をしているか確認すれば良かったのに慌てて叩き起こした俺も俺だし、のんきに目を覚ましたと思えば「泣いてる顔久しぶりに見た……」とかほざいた宇都峰を勢いで抱きしめてしまったことだけは忘れたいと思っている。
「こたつは諦めろ」
「でも、名取 と一緒にこたつでまったりしたいとか、思ってて……」
「……あ? 俺?」
「そう。今年は一緒に年も越せそうだし……冬って感じでいいなって」
前職のせいで生活能力が著しく低下していたコイツは、ありとあらゆることが疎かになってしまっていた。だからこうして宇都峰の家に通っているのだが、今年はその職場を退職している。今の職場に慣れるまでは続けようと考えているが、それも必要なくなることは分かっていた。いつお役御免になるのかと、少し怯えているところもあって。
だから、というか。まさかそんなことを言われるとは思ってもみなくて言葉に詰まってしまう。宇都峰はこちらをじっと見たままで、俺の反応を待っているようだ。
「お前の家は駄目」
「えっ」
「……うちに、なら……置いてやる」
「い、いいの……?」
「ん」
「年越しもしてくれる?」
「してやる」
「よか、った……」
宇都峰は息を吐き出しながら背もたれにぐったりと身体を預ける。力が抜けたのか、身体がずるりと机の下へ少しだけ沈んでいった。そんなに緊張することかと一瞬よぎったが、今のお互いの関係性を考えれば当たり前かとも思ってしまう。
「あんま大きいのは無理だけど、いいか?」
「もちろん。距離が遠いのは嫌だし」
「は」
「ん?」
「……いや」
「後で一緒に色々見てみよ」
「ああ」
こうして無事に宇都峰とこたつでまったり年越しする、という予定が生えたわけだが。後になって、名取と近付く口実にこたつが欲しかったんだと笑顔で言われることになるだなんて少しも考えていなかった。誰が分かるんだよそんなこと。
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