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第3話
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第3幕 優の暴走
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頬に触れていた指先が、熱を帯びて動いた。
そのまま――千秋の顎を掬い上げる。
「……優?」
驚きに声が揺れる。
けれど優の目は、もう引き返せない色をしていた。
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「千秋……俺、ずっと思ってた」
低い声。
胸の奥に溜めこんでいた何かが、とうとう漏れ出したみたいに。
「お前をわかってるのは……俺だけだろ?」
囁くと同時に、身体が覆いかぶさってくる。
「っ――やめろ!」
千秋は必死に腕で押し返す。
けれど体力はもう限界で、力なんて入らない。
ソファに押し倒され、視界いっぱいに優の顔が迫る。
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「俺がどれだけ……お前のこと見てきたと思ってんだ」
「優、やめろ……やめてくれ……!」
声が震える。
喉が乾いて、思うように音にならない。
「千秋……」
優の瞳は、優しさと狂おしさがごちゃ混ぜになっていて――
怖いのに、どこか懐かしい匂いがした。
だからこそ、余計に逃げられない。
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「……っ」
混乱の中で、胸の奥から自然に名前が溢れた。
「トリ――!!」
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その瞬間。
バンッ!
玄関の扉が荒々しく開く音が響いた。
低い靴音が床を打つ。
部屋の空気が一瞬で変わる。
「柳瀬――吉野に近づくな!」
怒声。
鋭くて、切り裂くようで、それでいて救いの色を帯びた声。
羽鳥が、帰ってきた。
出版社に向かっていたはずなのに。
嫌な予感に突き動かされて、真っ直ぐここへ引き返してきた。
千秋の胸に、張り詰めていた糸が切れる音がした。
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