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一線を越える 3
「わははは、凌太くんにお姫様抱っこされちゃった! すごーい! 腰大丈夫?」
「……身長の割に軽いけど、これは協力必須だな」
さすがに軽々とはいかなかったからか、凌太くんがベッドに両手をついて軽く息を整えている。
「そうだよーぅ。もう、俺みたいなのお姫様扱いするの凌太くんだけだよ」
「言ってるだろ。蛍は美人で可愛いって」
この身長で、決して華奢ではない男の俺をこんな風にに扱ってくれるなんて、それだけでキュンとするには十分だ。
「ん、ん……はぁ、んっ」
自然と唇を合わせ、深めるのと一緒に今度は自分でベッドに倒れ込んだ。
雰囲気を作り直す必要はなかった。
舌を絡ませる深いキスに、探る手は驚くほど熱く、シャツをめくられ首筋にキスを落とされるまであっという間だった。首輪がなかったら噛みつきそうな勢いだ。
「待って、脱ぐから」
「俺がしたい」
凌太くんの手で脱がされて、目の前で凌太くんも服を脱ぎ捨てて、その体を見て妙に恥ずかしくなった。
朝生くんは夜型のバンドマンだけど、ツアーを回るのに体力が必要だからと鍛えていてかなりかっこいい体をしている。
ムキムキすぎない適度な筋肉、厚い胸板に引き締まったお腹と腰。そして今は緩く勃ち上がりかけている朝生くん自身は立派で少し困るサイズ。そこも含めて、どこをとっても隙のないかっこよさ。
それを改めて目にして、本当にするんだと緊張が高まる。
「あの、これ使って」
「ん」
ベッドサイドの引き出しから掴み出したのは粘性の高いローション。ヒートの時は勝手に濡れるから使わないけど、念の為に用意してあったのがこんなところで生かされるとは。
「ん、あっ」
「痛いか?」
「ちが、久しぶりだから……あっ、ん」
今ライブ映像を見たところだから、あの器用に弦を押さえるセクシーな指が、中を解すために挿し込まれているかと思うとそれだけで心拍数が上がる。
「蛍、イイとこ、教えて」
「え、あ」
くちゅくちゅと指を動かされながら囁かれて、顔が熱くなった。自分で言えとは、なんて恥ずかしいことを。
かと言って少しでも慣れている俺がリードしなければならないことを考えれば、いつまでも恥じらっているわけにはいかない。
なにより言わなくてもさっきから指が掠めているから焦らされているみたいなものなんだ。指の動きに合わせて、腰が勝手に浮いてしまう。
「ん……っ、あ、そこ、あっ!」
「そうか。気持ちいいと締まるんだ」
確かめられる一つ一つがまるで言葉責めのようで、勝手にきゅんきゅん感じてしまう。
そして一度わかれば元々器用な凌太くんはそこを起点に指で刺激しだして、あっという間に俺の体を蕩けさせた。
「あっ、んあ……っ、ね、あの」
「なあ、良さそうだったら言って。痛い思いさせたくないから」
気を遣ってくれているのはわかるけど、それは暗に入れてほしかったら自分で言えということと同義語で。
いつもは俺の体のことを俺以上に知っている朝生くんが、俺が欲しがっているのを感じ取って一番欲しいタイミングで入れてくれる。その時は大概気持ち良さで意識を飛ばしているから、されるがままといった感じだけど。
当然だけどそんな記憶のない凌太くんはもちろんそんなことわからず、だから俺はあくまで意識を保ちながら自分から告げるしかない。……なんという羞恥プレイ。
「ん、あ、ぁ……凌太くん、もう」
「なあ、蛍。後ろからの方が負担が少ないって見たんだけど、その方がいい?」
「え、あ、その、じゃあ、そうするね」
よく考えれば恋人同士とはいえ実際この凌太くんは男と付き合うのもセックスするのも初めて。だからいざという時に男らしさが見えたら萎えるかもしれない。だったらせめて、と後ろを向いて四つん這いになった。これで少しは心理的負担が減るんじゃないだろうか。
「蛍、好きだよ」
「うん、俺も」
……なにより、恥ずかしい顔を見られなくて済む。
こんな風にストレートに愛を囁かれるのは慣れていないから、きっとしながら同じようなことを言われたらひどい顔をしてしまいそうだ。そんな顔見られたくない。
それにしても、バックからの方が負担が少ないというのは、もしかして男同士の仕方を調べたんだろうか。どこまでわかっているんだろう。普通のセックスの知識はあるんだろうか。
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