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come 3
それからさっさと邪魔な服を脱ぎ捨てて、倒れるようにベッドに沈み込む。二人で寝られるベッドだ。なんだってできる。
「早く入れて。早く噛んで」
「やだよ。ぜってぇ焦らす」
すぐに入れてほしかったのに、朝生くんはそんな宣言をしてキスをしてきた。
「ん、んっ、朝生くんのいじわる。キスきもちい。早く、もっと」
キスの嵐はじれったいけれど気持ち良くて、だからこそ早くと何度も急かした。それでもまだくれないから、我慢できずに朝生くん自身に手を伸ばして触れて、その熱さと大きさに鼓動を早めながら扱く。
「これ、欲しいよ朝生くん……ね、おねがい」
「お前ってホント普段とのギャップがさぁ……もういい」
ヒートの時は普段以上に頭が働かないから、気持ちを隠すことができない。なにより今まで溜め込んでいた愛情が爆発している気がする。いつもより朝生くんが欲しいし、朝生くんを気持ち良くしたい。オメガとして生まれて良かったって思わされたい。
「ひゃあ……んぁっ!」
煽った結果、朝生くんはまどろっこしい愛撫をやめて一気に奥まで貫いてくれた。濡れに濡れた場所だ。抵抗なんか一切ない。それがあまりに待ちに待った刺激すぎて、衝撃にも似た快感で目の前に星が散っている。
「ん、そんな締め付けんな。動けないだろ」
「待って、イって、る……からっ」
「待たないよ。気持ち良くするって言ったろ」
「あぁっ、んっ、焦らすって、言ったぁ」
「うん。だから本当に気持ち良くなるまで俺も噛むの我慢する」
そんな焦らし方あるか、と言いたいところだけどそれどころじゃなくて、浅い呼吸を繰り返して緩やかなピストンを受け入れる。
中イキを繰り返すその場所を強引に抜き差しされて擦られ、強すぎる刺激に声が止まらない。動くたびに聞こえる朝生くんの荒い息が、耳からも快感を増やしてくれる。
しかも朝生くんは俺の横に手をついて体を倒すと、首筋を舌で辿るように刺激してきた。
「んっ、んん、そこ、舐められると、イっちゃう」
「首輪ないもんな。いつでも噛める」
「んんんっ!」
首輪に守られていたせいで極端に弱い首筋を、下から伝うように舐め上げられて何度も甘イキしてしまう。
だってそこを噛まれたら番になるんだ。そんな場所に唇で触れられ、歯が当たるのを感じるだけで何度でもイけそうな気がする。
朝生くんがいつもより激しいし優しいしイジワルだ。
ただでさえ気持ちいいのに、こんなに乱されたらおかしくなってしまいそうだ。熱を治めるために何度も抱いてくれるいつものヒートと確実に違う。
「ちゃんと言っとくけど……俺で気持ちよくなってくれて嬉しい」
中を刺激しながら囁かれて、下っ腹がきゅんきゅん疼く。こちらからしたら気持ち良くしてくれて嬉しい、だ。
「感じてんのすげー可愛い」
「んんっ」
追い打ちの荒い吐息と笑み混じりの声に、嬉しさと恥ずかしさで体が震えた。
今までと違って素直に気持ちを言葉にしてくれる朝生くんの威力がすごくて、全然耐えられそうにない。新しい言葉責めだ。それとも褒め殺しというやつかもしれない。
確かにこんなに気持ちを思ったままに伝えられたら、俺は耐えられずに逃げ出していたかもしれない。それくらい愛に溢れすぎていて溺れそう。
セーブしてくれていた朝生くんが正解だったのかもしれない。でもすべてを知ってしまった今、俺は溺れたって全部飲み干したい。朝生くんからもらえるものなんて全部もらいたい。
「朝生くんにも、もっと気持ち良くなってほしい。どしたらいい?」
朝生くんが感じてくれてるのはわかる。それぐらいわかるくらいには回数を重ねた。だけどそれじゃあ足りない。もっと俺みたいにめちゃくちゃ感じてほしい。でもどうやったらいいかわからなくて、本人に問いかけた。
どうしたら俺は朝生くんに理性を飛ばすほど気持ち良くなってもらえるんだろう?
「……先に謝っとくけど、絶対抱き潰す。ごめん」
見上げて聞く俺に、朝生くんはなぜか気まずそうな顔で謝ってきた。なんでそうなるのかはわからないけれど、理由なんてどうだっていいことはわかる。
「そんなの、絶対されたい。うれしい。だいすき」
ダメになるまでめちゃくちゃ抱かれたい。そんなのされたいに決まってる。
止められなかった素直な気持ちが口から洩れた瞬間、朝生くんにスイッチが入ったのがわかった。
「お前ってホントかわいい。でも、今のはダメ」
「あっ、あ、んっ、んんっ、まって、奥、ふかい、ひあっ、あっ!」
いつもより激しいように見せかけて、事実ちゃんと焦らされていたのだと知るのはその後。
何度イっても終わらない快楽の海に溺れながら、何度も中に朝生くんの欲を受け入れた。アルファの本気は、俺の想像なんて生易しいものだったのだと存分に思い知らされた。
具体的に言うと、実際イくことに終わりはあっても、イく感覚は無限で恐いくらい何度でも上り詰められることを知ったこととか。アルファの回復力がとんでもなくて、本気になれば絶対逃がしてくれないこととか。気持ち良すぎて恐くなることも、柔軟の成果がこんなところで出たことも、こうならなきゃ知らなかった話だ。
ただ、あまりの気持ち良さに頭が働かなくなっていたせいで、肝心の噛まれた瞬間に意識がおぼろげだったのだけが悔やまれるところ。
ただ他にもたくさんつけられた歯型で、朝生くんが今までどれだけ本能を抑え込んでいたのかが知れたのはとても良かった。
全部残ってくれたら良かったのに、と残念がる俺の言葉を、朝生くんは二日酔いみたいな顔しながら否定した。
かくして俺は念願の番の跡を手に入れたのだった。
ありがとう、凌太くん。君なくして溺愛する朝生くんに出会うことはなかった。
だから安心して朝生くんの中におかえりなさい。
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