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セカンドアタック②

文化祭は晴天に恵まれていた。 天成学園高等部の校舎は朝から熱気に包まれている。 各クラス、部活、有志の出し物と、それぞれの居場所で生徒たちが熱心に取り組んでいる。 文化祭の間は、年間で唯一、他校の女生徒やΩが校内に立ち入りできる日でもある。そのためか、一部の生徒は浮足立ってもいる。 もっとも、何らかの出会いを期待しているのは、どちらかというと来校者の方で、天成学園の優秀で家柄の良い生徒と少しでも関係を持とうと意気込んで詰めかけてくる。 特に容姿も目立つとあれば、訪問客の注目を浴びてしまう。 雪弥と天陽もまた、遠巻きに、ひそひそとざわめきを引き起こしていた。 ――ねえねえ、あの人たち、めっちゃカッコよくない? ――絵になるよね すれ違う来訪者が口々に囁き合う。しかし、今年は例年よりも注目度が際立っている。 ――これ、あの人じゃない? 黒髪の方の。 ――実物のほうがすごくない? パンフレットを見ながら、雪弥に意味深に突き刺さる視線。なかにはパンフレットと雪弥とを交互に指さしている人もいる。 そういう来訪者に何度も出会えば、何が起きているのかを察知せざるをえない。 (大山、何かやらかしたな) 雪弥は内心で舌打ちをする。 「藤堂、これ見ろよ」 クラスの出し物の裏方スペースに入れば、クラスメートがパンフレットを渡してきた。折よくパンフレットを確認せねばと思っていたところだった。 確かに金をとるだけあって、今年のパンフレットは出来が違う。表紙はカラフルな色使いの学園校舎が描かれている。 最初のページは、校内地図や出し物などの説明で、後ろの大部分は、作品集とも呼べるほどの大掛かりなものとなっている。多彩な絵画や、詩や小説などの読み物が入っている。 「ほら、ここ」 クラスメートが見せてきたページに、雪弥は目を見張った。 宗教画のような厳かな油絵が載っているだ。青を基調に男性の上半身が描かれている。 (何だこれ) 細めた陰りのある目に、うすく開いた唇の口角は上がり微笑んでいるように見える。ゆったりとしたローブのようなものが裸体に巻き付いているが、どことなく駆り立てるものがある。 生成写真の雪弥をモデルにしたとしか思えなかった。背後の男性はおらず、上半身のみだが、その表情は生成写真の雪弥にそっくりだ。 タイトルを見て顔を強張らせる。 『Victim』 これだけの宗教画タッチの絵を描けるのは大山しかいない。 (大山の仕業だったか!) 雪弥はパンフレットを握りしめて立ち上がっていた。

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