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セカンドアタック④

天陽に肩を支えられて歩きながら、生徒会室についた。 「ちょっと休ませてくれ」 天陽の声に続き、秀人の声が聞こえてきた。 「藤堂先輩っ? 大丈夫ですか? きゅ、救急車……」 朦朧としながら雪弥は何とか声を絞り出した。 「……大げさにするな」 *** (あつい……。あつくてたまらない……) 雪弥は体中が熱っぽい。ずくずくと疼く。 (俺に何かが起きている……) 目を開けたとき、ひんやりとした床の感触があった。 天陽が心配そうな顔で雪弥を覗き込んでいた。 辺りを見回すと、書棚で囲まれている。生徒会室の奥の資料室だ。資料室には天陽しかおらず、執拗に絡みついていた視線も威圧もない。気が休まる。 床に座り込み天陽に寄りかかっているのに気づいた。 「……あ、ごめん」 体を起こそうとすると天陽が引き留めて、雪弥を自分の胸にもたせかける。 「いい。休んどけ」 天陽の汗の匂いが漂った。常のように安心を感じ、目を閉じたところで、体の奥で沸き立つような感覚が起きる。ずくずくと体じゅうの血管が波打つのを感じる。得体のしれない衝動が起き上がってくる。 (何だ、これ、何が起きてる……?) 雪弥は助けを求めるように天陽の胸に顔をうずめた。天陽がそんな雪弥の頭を撫でてきて、その手の感触に気が緩む。 (天陽……、助けて……。あつい……、体が熱いんだ……) 天陽の存在に言い様のない安心を感じながら、うつらうつらと意識を手放す。 ガチャリ、とドアの開く音がする。 「藤堂先輩はどうですか」 秀人の声だ。 「ちょっと休めば大丈夫だと思う。最近、いつもこんな感じだから。夕方になると熱を出すんだ」 「そうですか。あの」 秀人がためらった様子で口を閉ざし、次にスンスンと鼻を鳴らす音がする。 「あの、何か匂いませんか。いえ、匂いますよね」 「そうか?」 「ひょっとしてですけど、いえ、これは間違いなくΩの匂いです」 「何が言いたい?」 「藤堂先輩からは微かですけどΩの匂いがします」 (はァ?) 雪弥の背がピクリと動いた。その背をなだめるように天陽の手が撫でる。 「Ωと接触があったのかもしれないな」 「でも、藤堂先輩のその感じは」 「今日はΩも出入りしてる」 「でも、俺、今、あてられてます。その様子からして藤堂先輩は発情しかかっているとしか思えません。Ωの発情です」 (な、に? 何を言ってる?) 雪弥は覚醒しきらない意識で考える。何を言っているのか、理解できない。 (俺が発情しかかってる、だと? 秀人のやつ、頭がおかしくなったのか?) 「俺、発情状態のΩを見たことがあるからわかるんです」 天陽が戸惑うような声を出している。 「うーん、そうなの………?」 「このままだと、藤堂先輩が危険です」 (危険? どうして?) 雪弥が身をよじる。そんな雪弥を天陽がかき抱く。 「大丈夫だ、俺がいる」 「俺、念のために抑制剤を飲んどきます。天王寺先輩も飲んでください。薬と水をここに置いときますから」 秀人が部屋を出て行った。 (秀人め、おかしなことを言いやがって。起きなきゃ、俺)

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