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紛れ込んだΩ⑥

冬を迎える頃には、雪弥はより一層、天陽にそばにいてもらえるように苦心するようになっていた。 もしも天陽にそっぽを向かれてしまえば、雪弥の高校生活は終わる。 天陽は雪弥を放り出すような奴ではないとわかっているが、雪弥は自分の立場の弱さが天陽に媚びさせる。 大事な受験期に迷惑をかけているという申し訳なさもあった。 天陽の機嫌を取るのは自分の仕事だとばかりに天陽の気に入りそうな行動をとるようになった。 天陽が呼べばすぐに応じるし、ときには、自分から甘い声を出すこともあった。 「てんよう……」と天陽の胸に顔をうずめて甘える仕草もしてみせる。さすがに自分が可愛く甘えられているとは思ってはいない。 それでも天陽の満足げな顔に、それしか正解がないと思い込む。 (こんなの俺じゃない、こんなのみっともないだけだ) そんなのはわかっている。こんな自分に媚びるような真似をされても気持ち悪いに違いない。けれども天陽は満足げに笑んでいる。 ルームシャワーも一緒に浴びるようになった。 「足開いて?」と言われればその通りにする。「顔をあげて?」と言われれば背けた顔を上げる。「俺を見て?」と言われれば目を合わせる。 すると天陽は満足げに笑う。 自己嫌悪は頭の隅に追いやった。次第にその振る舞いも板についてきた。 「雪弥、おいで」 天陽が言えば、笑いかけてすぐさま膝に乗り、首に腕を回して、甘えるように首をかしげて唇を求めてみせる。みっともなく見えるのはわかっている。 それでも天陽の満足げな顔に、それしか正解がないと思い込む。 秀人が部屋にやってきたのはそんな折りだった。

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